〜第12回大会HERO列伝〜

 参加総数256チームを数えた第12回大会
今大会も個性溢れる猛者たちが、その頂点目指しグランドに輝いた
熱闘の11日間・・・・ 大会を沸かせたヒーローたちを追ってみた



中口 玲
[Ash]
守護神専念でも
見せた大会No.1右腕の実力


 背番号11の守護神が、東京ドームのマウンドで吠えた。大会史上2度目の2年連続優勝が成った瞬間、この試合リリーフで登板した中口投手はナインとともに歓喜の抱擁に加わった。130`を超える速球と鋭い変化球で三振の山を築く中口投手。チームも2連覇を果たしAshは黄金時代を迎えようとしている。だがそんな王者も、今大会は決して楽な試合ばかりではなかった。この不動のエース中口も仕事の都合でなかなかチームに合流できず、戦列に加わったのは大会も終盤戦を迎えた準々決勝からだった。「この春はなかなか試合に参加できずチームに貢献できませんでした。しかし最後にまた東京ドームの舞台に立てて最高です。ここまで頑張ってくれた仲間に感謝したいです」遅れてきたエースはそれまでの分を取り戻さんとばかりに最後の3試合をさすがの投球で締めた。

小澤 純悟
[日油技研工業馨
準V投手に輝いた左腕は
粘りの投球が持ち味の大黒柱


 「得意のスライダーを狙われリズムが崩れた。向こう(Ash)のバッティングが僕の力より上だった、ということです」。優勝戦の試合後、小澤投手は落ち着いた口調でこう振り返った。初回いきなり単打をつなげられ無死2・3塁のピンチを迎える。ここでAshの3番富樫選手にきれいにレフト前に持っていかれ、早々と先制を許す苦しい展開の優勝戦となった。その後は最終回までAshを無失点に封じ込め踏ん張りを見せるも、打線はAshが誇る石原-中口の必勝投手リレーに苦戦。十分な援護を得られなかった小澤投手は、ついに力尽きた。しかし今大会、チームを見事東京ドームの舞台まで導いた快進撃は、小澤投手の活躍なくして語ることはできない。準々決勝の完封勝利、準決勝の四ッ葉倶楽部戦の執念の完投劇と、大会をもっとも沸かせた投手ということに誰も異論はないだろう。

永島 利之
[四ッ葉倶楽部]
たくましさと勝負強さを兼ね備えた
大会注目の長距離砲


 どっしり腰の据わった構えで右打席に立つ貫禄。スイングスピードの速さと、繰り出される鋭い打球。四ッ葉倶楽部の主砲・永島選手には強打者の条件が揃っていた。準々決勝の強豪GLARE'04との試合。1点を追う5回、走者を2人置いたチャンスでレフトの頭上を襲う逆転の2塁打を放つなど、今大会は初戦からその強打ぶりをいかんなく発揮。見事チームを3季ぶりのベスト4に導いた。そして迎えた延長8回の熱闘となった準決勝の日油技研工業叶。1点を追う最終回2死、打席には永島選手が入っていた。一発出れば同点の場面だったが、ここは直球を見逃し無念の三振で最後の打者となってしまった。「今日は相手投手の気迫にやられました。何とか次の打者につなげたかったのですが、最後が見逃しになってしまって悔しいです」と唇をかみ締めた。

田村 誠
[習志野バブルス]
自慢の変化球武器に
王者Ashに真っ向勝負


 チームとして3年ぶりの準決勝進出を果たし、初の優勝戦進出まであと一歩に迫った習志野バブルス。今大会でもその実力の高さを改めて証明して見せた。そんな強豪のマウンドを守り続けているのが右腕エースの田村。しかし今大会は初戦からいまひとつ調子が上がらず本来の出来とは程遠い状態が続いた。そんな中で迎えた準々決勝の東京レイダース戦。この試合はこれまでの投球とは一変し、外角をえぐるスライダーをうまく駆使しテンポの良い投球を披露。見事安定感のある完封勝利で飾り、今大会ベストピッチングを展開した。ドームを賭けたAshとの準決勝では強力打線の長打攻勢に沈んだがエースの存在感は十分に示した。敗退後、「東京ドームを目前にして行けないのはすごく悔しいですが、相手の打線が一枚上手でした」と振り返り姿を消した。

渡辺 拓郎
[GLARE'04]
投打で見せてくれた
GLARE'04今春の主戦


 その躍動感あふれるピッチングが影を潜めた。四ッ葉倶楽部に打ち込まれ、コントロールが安定せずに5回で降板。今大会大車輪の活躍で完封勝利を続けて来た姿が消えた。試合後、「コントロールと精神面を鍛えたい」と肩を落とした。この春はエース大根原投手に代わりGLARE'04のマウンドを守った渡辺投手。5回戦では強豪の醍醐製作所グーフィーズ打線を沈黙させ完封するなど安定感のある投球を見せてきた。「大根原さんにはドームで投げてもらいたいので、そこまでは自分が何とか頑張りたい」そう言って頑張ったこの試合。試合終了後悔しさが止まらなかった渡辺投手。それをねぎらってくれたのは、チームの佐藤監督だった。「今大会よく頑張ってくれたね」 秋、またこの舞台へ。厚い結束で結ばれたGLARE''04の秋への挑戦が今日、始まった。

金木 康弘
[とん吉]
積極果敢な直球勝負
ベスト8へ進出し完全燃焼


 「金木には、今日の試合で気迫を見せてもらいました」試合後、藤沢監督が開口一番にエース金木投手を褒めた。準々決勝の日油技研工業叶、序盤は立て続けに早いカウントから外角の変化球を痛打された。3番生井澤選手に先制タイムリーを打たれた5回の投球は得意のスライダーが抜けて真ん中に入ってきた。「変化球が狙われていました。でもコースを突けば大丈夫だと思っていました。何とか抑えたかったのですが相手の打者の力が上でした」。2試合連続で完投。調子は上々と思われたが、この試合は最近痛めた肘痛に耐えながらの投球だった。しかし勝負どころでは自信のある変化球を臆することなく投げ込んだ。「みんなでここまで勝ち残れてうれしかったです」自分らしい投球で幕を下ろしたベスト8に胸を張った。

小池 貴昭
[浅草魂]
自慢の打撃の裏で
好投見せたエースの意地


 1-1の同点で迎えた7回の裏・2死満塁。この好機に迎えたAsh綿貫選手の打球がセカンドのグラブを弾きセンター前に抜けていく。この瞬間、浅草魂の東京ドームへの夢が消えた。「サヨナラ打は外のスライダーが真ん中に入ってしまいました。慎重に投げたつもりでしたが・・・」 長くチームのエースとして君臨してきた小池投手。しかし今大会は序盤、野手としての出場が続いた。もう一人の主戦佐久間投手が急速に力をつけてきたからだ。しかし迎えた5回戦、昨秋準優勝の蠍との大一番で小池投手にようやく先発の大役が回ってきた。結果は序盤制球に苦しんだが中盤以降立ち直り、見事剛腕四ノ宮に投げ勝った。「あの試合は本当に印象に残っています。相手も四ノ宮投手ということで気合も入りました。また秋に出直します」と最後は今大会の投球に胸を張って会場を後にした。

川本
[東京レイダース]
クレーバーなプレースタイルの裏に
潜む熱きハート


 「今日は試合前からあまり体調がよくなかったです。投げていくうちに修正できると思ったのですが、最後まで悪いままで・・・ 全体的に球が甘かったです」 初戦から6試合中、5試合に登板。毎試合のように好投を続け、チームの大会初となる8強進出に大きく貢献。このまま波に乗って優勝を目指すはずだった。しかし準々決勝のこの試合、4回に長打を打たれその後味方のまずい守りも絡み痛い1点を失った。序盤は習志野バブルス打線を完璧に抑えていただけに悔やまれるイニングとなった。「あの回に打たれた長打は2ストライクから三球三振にとろうと真ん中に入ってしまった球を打たれました。相手の4番はいい振りをしていましたね」と振り返る。敗れはしたが大活躍した今大会の経験は、これからのマウンドできっと生きてくるはずだ。