〜第15回記念大会HERO列伝〜

参加総数256チームを数えた第15回記念大会

今大会も個性溢れる猛者たちが、その頂点目指しグランドに輝いた。

熱闘の13日間・・・・

大会を沸かせたヒーローたちを追ってみた。

 「気力で打者に向かっていきます」 抜群の制球力で打者を簡単に料理。1回戦から重要な試合はほぼマウンドに上がり、チームを大会史上最多となる4度目の優勝に導いた。「自分には目を見張るような球があるわけではないので、コントロールで打たせて取りたい。コースに投げていれば、いい当たりをされても大抵は野手の正面に飛んでくれますから」 準決勝では強打を誇るGLARE'04打線を1失点に抑え完投勝利。優勝戦でもリリーフを仰いだものの堂々の勝利投手に輝くなど、大舞台での強さを大いに発揮した。「今年は清籐が本当によく成長してくれました。常に向かっていく姿勢で投げてくれるので、試合が壊れることがないですね」と大会bPの実績を誇る名将の土井監督も脱帽。「支えてくれた人がいたからここまで来れました。今後もこの優勝を自信に頑張ります」


 「大澤は本当に頼りになる打者です」 これまでの大会中、佐川急便千葉ナインの何人から、同じ言葉を耳にしたことか。これほどベンチに期待され、これほどその期待にこたえた選手は、そうそういるものではない。今大会でもそのナインの言うとおりの活躍を見せた。中でも今大会快進撃を続けてきた注目の専門学生・HANAと激突した準々決勝では、1-1の同点で迎えた6回1死2・3塁と一打逆転のチャンスで、ライト前にきれいに弾き返し決勝点を挙げた。この場面はまさに大沢の真骨頂。味方だけでなく、おそらく相手のHANAも打たれるかもしれないと思ったのではないかと思われるほど、ヒットが出そうな雰囲気に満ち溢れていた。「あの打席は集中を高めて、いい球は絶対逃さないように気合を入れて臨みました。仕事が出来てホットしました」


 「あの角度はまったく打てませんね」とある強豪チームの左打者が話すように、独特の癖のあるフォームから快速球を投げ込む左腕には、大抵の左打者はお手上げ状態。準決勝までは毎試合のように数多くの三振を奪い、一躍スターダムにのし上がった。しかし迎えた西武ドームでの優勝戦、3回までほぼパーフェクトに抑える好投を見せるも、4回に手痛いタイムリーを浴びた直後から四球と暴投を繰り返し、まさかの大量失点を喫した。「あの回はエアポケットに入った状態でした。和多田選手に打たれてからは冷静さを失っていました」 ここまで好投してきた怪物でさえ自分の投球を見失う・・・ やはり大舞台には"魔物"が棲んでいると言うことか。しかし今大会を一番沸かせたのは、紛れもないこのTNCの左腕エース。'06年夏の主役は今後どこまで進化していくだろうか。


 マスクを右手で取って大きな声で内外野に指示を出す。ピンチの場面ではすかさずマウンドに走り、笑顔で投手の肩をポンポンと叩いてまた自分のポジションへ。励まされた投手はそのピンチを乗り越える。今大会はそんな場面を何度も見た。遠投120bを楽に越す強肩に加え、捕ってから投げるまでの素早さ、頭脳的なリード、そして何度も披露された力強いバッティング。そんな小椋が引っ張るTNCスパークスが今秋、ついに悲願だったドーム球場進出の夢を達成。攻守に活躍した小椋は優勝戦の試合後、胸に輝く準Vメダルを手にこう話した。「準優勝の実感はまだありません。でもここまで来られたのは勝ちたいという気持ちが強かったから。年々落ちる体力を気持ちでカバーすることが出来ました」 今後の大会でも活躍が期待される楽しみな捕手だ。


 「今日は試合を作れませんでした。大事な序盤の3回で3点を取られてしまって」と話すのは、もはやGLARE'04にとっては宿敵とも言える佐川急便千葉に敗れた準決勝の試合後の談話。丸木はこれまでの大会では主に打者として活躍。長打を連発する迫力のある打撃から、一躍大会を代表するスラッガーの一人として数えられていた。しかし今大会はチーム事情から2回戦以降はすべての試合で先発マウンドに上がるなど、GLARE'04の投手陣の主軸を担ってきた。打っても4番の丸木はいまや押しも押されもせぬGLARE'04の中心選手と呼べる存在だ。「今大会は打つ方ではあまり自分のバッティングが出来ませんでした。それが心残りです。しかし投げる方ではある程度の満足はしています。まわりもよく守ってくれたし、投球に少し自信がつきました」


 過去に準優勝を経験し、昨年の大会もベスト8。その昨秋まで4大会連続ベスト8以上に残るという輝かしい成績を残しているGLARE'04。今大会も過去の実績に劣ることがないベスト4入りを果たしたが、山下の表情には笑顔がない。昨年敗れて以来、大きな目標であった王者・佐川急便千葉にまたしても勝てなかったからだ。山下は普段レフトを守っているが、先発投手の調子がおかしくなるとリリーフとし大抵マウンドに上がる。打ってはシャープなバッティングでチャンスに強く、準決勝の佐川急便千葉戦でも唯一の得点となるタイムリー3塁打を放つなど、GLARE'04には欠かせない重要な選手だ。「悔しいけど今度当たったら佐川急便千葉は必ず倒します」 敗れた準決勝の試合後そう言い残して大会を後にした。


 過去幾度となく大会を沸かせた右腕が今大会で復活した。エンドレスの黒田は長くチームを支えてきた豪腕エース。しかし近年は長年の疲労が蓄積してかマウンドに上がれないことも多かった。それに伴いチームも成績が振るわず、また転勤等でメンバーが不足しエンドレスは存続の危機さえ迎えていた。しかし今大会の黒田は初戦からそんなチームの危機を吹き飛ばすような好投を続けた。迎えた準々決勝、ここまで何度となく跳ね返され続けた大きな鬼門も気迫あふれる投球で突破。チームの念願であるベスト4にコマを進めた。続く準決勝では惜しくも敗れたが試合後、「ドームまであと一つだったのですが残念です。しかし今日の負けでまた欲が沸いてきたので、チームの解散についてはもう一度検討しなくてはならないですね。やはりドームに行くまではやめられません」と新たな目標に再びターゲットを絞っていた。


 快進撃を続けてきたエンドレスにあって、勝利の陰にはいつも小山がいた。1回戦からしぶとい打撃で安打を重ねてきたが、中でも圧巻だったのが逆転勝利を飾った準々決勝の練馬アドベンチャーズ戦。相手のミス絡みで逆転した後、とどめとの特大の3ランホームランを放つなど、4打点を挙げ勝利に大きく貢献したのがこの小山だった。「劣勢の試合では何とかしようという気持ちが強くなります。あの打席は気合が入りました」 準決勝でもその勝負強さに期待がかかったが、相手のTNCスパークスの怪物左腕・福田の前に沈黙。チームも敗れ、夢舞台まであと1勝のところで姿を消すこととなった。「悔いはありません。今大会は初めてベスト4まで来られたし、いい形でみんなと野球ができましたから」 無類の勝負強さを発揮した小山は笑顔で会場を去った。


 この春初優勝を果たし一躍注目のチームとなったピエロ。その初Vに大きく貢献したエースは、さらに成長して夏のアークカップに帰ってきた。しかし自身の成長とは裏腹に、今大会チームは初戦から苦戦の連続。神がかり的なプレーが飛び出し何とかベスト8まで進んだが、TNCスパークスとの息詰まる投手戦に競り負けた。「TNC戦では逆転された6回に下半身の粘りがなくなって、生命線である低めのコントロールに苦しみました。その結果変化球が入らず、ストレートを狙われてしまった。自分はまだまだ力不足。でも、自分のスタイルは貫けました。相手が上でしたね。この負けを燃料にしてもっと前に進みたいです」 春夏連覇の夢を絶たれた試合後にそう話してくれた。「また絶対に優勝したいです」 名実ともにチームを引っ張り、再びの頂点を目指す。  過去専門学校の大会で輝きを見せた鉄腕ぶりを、アークカップでもいかんなく発揮した。初戦から重い直球に鋭いスライダーを駆使し打者を翻弄。打ってもここ一番の場面でタイムリーを連発するなど、チームの快進撃の主役を担った。そして何よりマウンドでの風格十分のその姿は、いまだ10代であることがとても信じられない。しかし注目された準々決勝の王者・佐川急便千葉戦では、4回にまさかの太もものつけ根を痛めるアクシデントに見舞われ途中降板。最後はチョッピリ悔いを残す形となった。「強豪チームが多いアークカップで自分の力を試せました。悔いはないです」 4月からは関東近郊のホテルで料理人としての修行が始まる。まさに最後の舞台で存分に輝きを見せたエースはさわやかな笑顔で大会を去った。

 「悔しい。本当に悔しいです」 あと一歩でベスト4入りを逃がした松尾の言葉には実感が込められていた。試合は劣勢だったが終盤追いつき、さらに逆転を思わせた場面もあったが、相手のファインプレーによって阻まれ、結局無念のサヨナラ負けを喫した。「今日は自分の投球ができませんでした。初回の失点が痛かった。昨年ベスト8に初めて入ったので、今大会はそれを上回りたかったのですが」と敗戦後力なく話してくれた。松尾は今大会、すべての試合に先発。お馴染みのリリーフエース・北川につなぐ必勝リレーが今年も機能した。しかし松尾には今大会心残りがある。それはすべての試合で初回の先頭打者を出してしまった点だ。準々決勝でもその走者に先制のホームインを許してしまった。「春に向けてまたトレーニングをして頑張ります」と再起を誓った。  練馬アドベンチャーズの主将・斎藤は、野球に対するひたむきな姿勢でチームを牽引している。チームはこの秋ベスト8という長年の悲願とも言える上位進出を見事に果たした。堅守のサードとして安定感抜群の斎藤の守備は、ディフェンスが売りのチームにとってその存在は実に大きいものがある。健闘むなしく敗れた準々決勝の試合後、チームメイトが去った後も、ただ一人最後までグランドに残り道具の手入れをする斎藤の姿がそこにあった。そこで斎藤は、「昨晩もいろんな場面をイメージしながら200球素振りをしてきました。長打をガンガン打つとかそういったことではなく、野球に対する取り組みで自分は4番を打たせてもらっていると思うので、これは欠かせません」 たゆまぬ努力でチームを引っ張る主将の何たるかを垣間見たような気がした。

 初出場のDANTEを頼れるエース・宮本が引っ張った。4回戦のカージナルス戦、初回に四球で走者を出した以外は完璧に抑え、見事にノーヒットノーランをマークした。「自分は普通の投手なのでたまたまです」と淡々と話すエースだが、3回戦では春にベスト4入りを果たした強豪・高洲サタンズを相手に序盤の大量リードを守り切り完投勝ちするなど、鉄腕ぶりをいかんなく発揮した。とくに最終回、高洲サタンズに2点差に迫られなお無死3塁の状況で3塁走者を冷静にけん制で刺しピンチを切り抜けた場面は、宮本の精神面の強さを垣間見た。  プロ野球や高校野球などでは毎年のように期待のホームラン打者が登場し、その打席に多くの注目が注がれる。しかし投手が優位の軟式野球では、一発を期待させる選手はそうそういるものではない。だが柴代は今大会その認識を覆した。2回戦、最終回1死まで2点差を追いかける展開から起死回生の同点2ラン。3回戦でも先制アーチを放った後に迎えた4回戦、同点で迎えた延長サドンデスで貴重な勝ち越しタイムリーを放つなど、まさに打ち出の小槌のように毎試合勝負を決めるその姿はまさに"頼れる主砲"の貫禄が十分だった。

 大会出場歴の長いニューヤンキースに初の5回戦進出の快挙をもたらしたのは、一人のベテラン左腕だった。藤本はこの秋コーナーをうまく突くストレートと、90`前後のカーブ、緩急をうまくつけた投球術でチームの快進撃を支えた。5回戦では王者・佐川急便千葉に敗れはしたが、藤本は強豪を相手に2失点で抑えた。「今日は負けてしまいましたが、佐川千葉を2点に抑えられたことは大きな自信になりました。まだまだ先発で投げますよ」と敗れはしたが満足感でいっぱいだった。  「悔しすぎてたまらないです」と5回戦の試合後涙でしばらく顔を上げることが出来なかった永富投手。まさかの逆転サヨナラ負けを許してしまった。今大会は持ち前の度胸満点の投球に必殺変化球の"ガニエ"を駆使して好投。5回戦進出の原動力となった。しかしベスト8入りをかけたエンドレス戦ではまたもや好投を見せるも味方の援護にも恵まれず敗退。試合後はベンチ前に泣き崩れた。「来年は絶対にこの悔しさを晴らします。それには優勝しかないです」と最後に固く誓いを立てた。