30歳を迎え、いまだ進化を遂げる右腕・土屋が絶対的なエース。180aの長身から切れのいいMAX135`の速球とカーブ、スライダー、シュートなど多彩な球種を投げ込み、見事チームを初の大舞台へと導いた。また、三振を取れるのが土屋の最大の魅力だが、失点も少なく安定感も十分だ。優勝戦ではこの土屋にすべてを託すと思われるが、控えの投手陣も充実している。背番号18を付ける右腕の中川は、MAX140`を越える速球が自慢の本格派。これまで制球にやや難があったが、今大会で見事に克服。土屋と並び2枚看板と言われるまでに成長した。ドームで先発しても決しておかしくない実力の持ち主だ。その他、初戦で投げた普段はセンターを守る村上も貴重な唯一の左腕として控えており層は厚い。
▲お馴染みの豪腕エース土屋(左)と成長著しい速球派の中川
 ここ一番での長打力が突出する豪快な印象が強い。中軸以降にも一発が期待でき、まさに「強力打線」と言うにふさわしい陣容が揃った。4番を打つエースの土屋は、腕っぷしの強さから生み出す弾丸ライナーが持ち味。準々決勝のとらひげ戦では、1点を追う4回に貴重な同点弾を放つなど勝負強さも増した。スイングスピードの鋭い3番で主将の徳永も、土屋に負けず劣らずパワー、確実性に優れたスラッガー。5番の村上は勝負強く、他チームでは確実に4番を打つ力を持つ。1番の小池は選球眼が良く、出塁率が高い。5回戦で流れを引き込む絶妙なセーフティーバントを決めるなど頼りになる好打者・大内田や、粘り強い打撃が持ち味の広瀬、2番で小技も使える井倉らも、いやらしい存在だ。
▲破壊力満点の長距離砲がズラリ(左から岡田・土屋・村上)
 「やっとアークカップでここまで来ることができました」と言う加藤監督の言葉が示す通り、ヤンキースにとっては悲願といえる今回の優勝戦進出。様々な大会で常に上位へ顔を出しているヤンキース。その実績からすれば、これまでに既にドームへ行っていても決して不思議ではないが、なぜかアークカップでは上位へ進めず、この春が決勝戦どころか初めてベスト8入りだった。そんな永年の壁を打ち破り優勝戦へ駆け上がった原動力は、自慢の強打はもちろんだが、今大会で新たに芽生えた野球に対する意識改革によるところも大きい。長くバントなど小技を駆使することがなかったヤンキースだったが、この春は加藤監督の号令の下、自由な野球を一時封印し、スクイズなど細かな組織プレーを多用する作戦に変更した。その成果がこのたびの結果にすぐに結びついた。そんな「ニュータイプ」のヤンキースとして初めて大舞台に挑む今回の戦いぶりに注目したい。
▲長いトンネルを抜け、ようやく辿り着いた大舞台で戴冠に挑む