11月25日(日)  優勝戦 1 2 3 4 5 6 7 8 9
CHOTTO CHIGAUZO
(新宿区)
0 0 0 0 0 0 0 0 2 2
ピエロ
(世田谷区)
0 0 0 0 0 0 0 0 3× 3
※大会規定により、8回・9回は1死満塁のサドンデスを実施


優勝戦実況

 参加256チームがアークカップの頂点を目指して戦った2007年の夏。17回を数える大会の優勝戦の晴れ舞台に残ったのは、強打を誇る王者・ピエロと、好投手・春日を擁するCHOTTO CHIGAUZOだった。


▲絶好のコンディションで迎えた優勝戦
 2度目の頂点を目指すピエロは、ここ2大会は連続してベスト8に終わり、優勝まであと一歩の歯がゆいところでの敗戦が続いていた。CHOTTO CHIGAUZOを攻略するには何といっても、春日を打ち崩さなければならない。春日は得意のスライダー、スクリューを駆使し、準決勝まで過去最高の出来ではないかと思わせるほどの完璧な投球を続けていた。しかし、ナインはナーバスにはなっていなかった。「経験豊富な春日さんと戦えて勉強になります」、「いい投手と対戦できるのは財産になります」と試合前にコメント。

 一方のCHOTTO CHIGAUZOは、2年前に一度準優勝の経験はあるが、大会前の下馬評はあまり高くはなかった。カギを握るエース・春日は今大会絶好調とはいえ、相手は強打者が多く揃うピエロ。ある程度打たれるのは覚悟の上マウンドに登った。また、打線もここまでいまだ無失点の中須が相手。MAX140㌔近くを誇る豪腕エースにどう挑むかが注目されていた。ここまでの勝ち上がりを振り返えると、たしかにピエロは強い。しかし逆に言えば投打ともども、真っ向からぶつかっていける最高の精神状態だった。
▲両軍ベストオーダーで最終決戦に臨む

 11月25日、午後12時20分、決戦の火蓋は切られた。


▲毎回のようにランナーを送り込むも・・・


▲堅守に阻まれ、ホームにたどり着けない
 初回、三者凡退で終わったCHOTTO CHIGAUZOに対し、ピエロはいきなりチャンスを迎える。先頭の武田がフルカウントから四球を選び出塁する。続く2番・浅海は3球目のストレートをジャストミート。強い当たりがセンターラインを襲う。誰もがヒットと思った打球だったが、これをCHOTTO CHIGAUZOのセカンド宮崎が横っ飛びの逆シングルで何とかグラブに収め、さらにそのままの状態でベースにタッチする形となりフォースアウト。抜けていればいきなり無死1・2塁となる大ピンチだっただけに値千金の好プレーだった。ピエロはその後も、この日やや制球難の春日を攻め度々チャンスを作る。3回は2つの四死球と内野エラーで1死満塁とするが、続く好打者の3番・伊藤が浅いライトフライ、4番の廣島は空振り三振に倒れ無得点。6回には死球と野選で出した走者を1・2塁に置き、打者は勝負強い7番・橋口。カウント2-1からの4球目を叩いた打球はレフトを襲う痛烈な当たり。しかしこれを相手レフトの清水が好捕。打球につられて飛び出したセカンドランナーも刺され痛恨のダブルプレー。どうしても1点が奪えない。

 対するCHOTTO CHIGAUZOは、ピエロ・中須の地を這うような速球を前になかなか手が出ない。2回は先頭の4番・米山(貴)がファールで粘った末に四球を選ぶが、後続が2つの三振を奪われるなど続かず無得点。4回には1死からこの試合チーム初の安打となる3番・清水の内野安打が飛び出すが、その後のクリーンアップが相次いで倒れ、なかなか中須を攻略できない。そんなCHOTTO CHIGAUZOに好機らしいチャンスが訪れたのは回が押し迫った7回。この回先頭の3番・清水が粘った末に四球を選び出塁すると、1死後清水がセカンドに盗塁を決め、1死2塁と一打サヨナラのチャンスを作る。その後内野ゴロと死球で2死ながら1・3塁と場面が変わりチャンスが続くが、途中から入った7番の阿部が三振に倒れこの回も無得点。結局、試合は7回を終了して双方得点がなく、1死満塁から始まるサドンデス方式による延長戦に突入した。


 サドンデスは双方任意の打順から毎回開始できる特別ルール。まず8回表のCHOTTO CHIGAUZOの攻撃はもちろんこの人、今大会2度のサドンデスで決勝打を放った「ミスターサドンデス」こと2番・宮崎から始まる打順を当然のように選択した。宮崎はこの日はノーヒットながら、初回にピンチを防ぐ超ファインプレーを見せるなどやはり怖い存在。宮崎はカウントワンボールで迎えた2球目をフルスイング。ジャストミートした打球はショートの横を襲う鋭い当たり。しかしこれをピエロのショート寺山が好捕、飛び出した3塁走者・三鴨も刺され、まさかのダブルプレーで一瞬にしてチャンスが消えた。

▲7回には3塁まで走者を進めるが・・・


▲あと1本が出ず、チャンスを生かせない



▲Mr.サドンデスをしても、均衡は破れない


▲連続フライに倒れ、1点が奪えない
 沸くピエロナインに対し、対照的にCHOTTO CHIGAUZOナインからはミスターサドンデスが打ち取られたショックがありありと見られた。その裏ピエロは9番・福田から始まる打順を選択。表の攻撃を0点で凌いだだけに、1点取ればサヨナラと俄然優位な状況に立った。迎えた福田は初球、2球目とボールを選びカウントノーツー。このまま押し出しで試合終了といった空気も場内に流れ始めたが、ここは春日が何とか持ち直し福田をセカンドフライ、続く1番の武田もセンターフライに打ち取り、サヨナラのピンチを脱した。

 そして試合は再びサドンデスルールによる延長9回に突入した。表のCHOTTO CHIGAUZOはこの回は3番・清水から始まる打順を選択。しかし期待された清水は空振りの三振に倒れ2死。この回も無得点に終わるのかと思われたが、しかし続く4番の米山(貴)は3球ファールで粘ったあとの6球目、中須の速いストレートをついにジャストミート。打球は1・2塁間を破り一気に2者が生還。CHOTTO CHIGAUZOが9回にようやく均衡を破った。
▲4番のタイムリーで、ついに2点を先取


▲球場全体が静まり返った特大ファール
 一方2点差を追うピエロはその裏、8回の続きとも言える2番・浅海からの打順を選択。前回に引き続きまたもやカウントノーツーとなった後の3球目を浅海はフルスイング。高々と上がった打球はレフトポール際を襲う鋭い当たり。軟式野球ながら広いマリンスタジアムであっても飛距離十分な打球で、一瞬誰もが逆転サヨナラ満塁本塁打かと思われたが、わずか50cmポールから左にそれファール。プロ野球を彷彿とさせるスタンド中段へのものすごい打球だっただけに惜しまれる当たりだった。

 しかし、この一打が試合の流れを一変させる。結局浅海はその後四球を選び、押し出しで1点差に迫ると、さらに1死満塁と今度は一打サヨナラの好機に好打者の3番・伊藤が打席に入った。伊藤はボールをじっくり選び、カウントワンスリーから迎えた5球目をうまくジャストミート。打球はライトにやや高く上がったが、これがグングンと伸びそのままライトの頭上を越えた。この間に2者が相次ぎ生還し、ピエロが土壇場で2点のビハインドを跳ね返し、劇的な逆転サヨナラ勝ちで2度目の頂点に輝いた。
▲伊藤のサヨナラ打で、ピエロが劇的大逆転V

 試合後の閉会式でピエロの平野監督にアークカップが贈られ、256チームの参加で始まった第17回大会の熱戦の幕が下ろされた。


▲昨春以来となる2度目の栄冠を手にした
 優勝したピエロは昨年の春に引き続き、2度目の優勝。その後の2大会でも連続して8強に残るなど、近年の大会の実績はNo.1。今、最も強く安定感のあるチームで、まさに向かうところ敵なしの「ピエロ黄金時代」を迎えたと言っていいだろう。一方のCHOTTO CHIGAUZOは決勝でこそ敗れはしたが、最後の最後まで王者・ピエロに食らい付き好勝負を演出。その戦いぶりは賞賛に値するものだった。大会屈指の好左腕・春日を先頭にナインは精一杯戦った。「一球一球、気持ちを込めながら投げられたので、悔いはないです」と、春日の顔も晴れやかだった。