6月8日(日)  優勝戦 1 2 3 4 5 6 7
DELTA (渋谷区) 0 0 0 0 0 0 0 0
TNCスパークス (荒川区) 1 0 0 0 1 0 × 2



優勝戦実況

 参加256チームが、頂点を目指して戦った2008年の春。決勝の晴れ舞台に残った2チームは、昨年の優勝チームで2連覇を目指す王者・TNCスパークス(荒川区)と、初出場ながら快進撃を見せ今大会に爽やかな旋風を巻き起こしているDELTA(渋谷区)だった。



▲TNCの先発は、ベテラン右腕・竹野


▲DELTAの先発は、不動のエース・阿部
 昨年もこの東京ドームで歓喜の美酒を味わったTNCスパークスは、今年も堂々の戦いぶりで大舞台に戻ってきた。ナインからは、「普段通りの野球をするだけです」と試合前にコメント。一方のDELTA。アークカップで頂点を獲るために結成されたチームが、まさに有言実行の破竹の連勝劇を演じ、あれよあれよの間に決勝まで進出。カギを握るのは、主軸でリリーフエースもこなす主将の割田。投打に大車輪の活躍でチームをここまで引っ張ってきた原動力であることは誰もが認めるところ。「相手は横綱ですが、気持ちで負けないようにしたいです」と言う割田。そして他のナインも、「ドームという大舞台でも、のまれることなくことなく強気な野球をしたい」と、チームモットーである“平常心是道”を強調する選手が何人もいた。投打ともども、真っ向からTNCスパークスにぶつかっていく最高の精神状態だった。この対称的なカラーの両チームによる優勝戦は、果たしてどんな展開になるのか。何が勝敗を分けるのか。予断を許さない期待感とともに、平成20年6月8日、大一番は幕を開けた。

 この試合はTNCスパークスがベテラン右腕の竹野、DELTAはエースの阿部という大方の予想通り、両右腕の先発で試合は始まった。

 先制したのはTNCスパークス。初回1死から、2番・井上がライトの頭上を越える大きな当たりを放つ。2塁打かとも思われた打球だったが、躊躇せず3塁へ向かった井上の好走塁もあり、いきなり1死3塁と絶好の先制機を迎える。続く3番・佐藤がストレートの四球を選び1・3塁とした後、迎えた4番・永森がレフト前にしぶとく弾き返し、TNCスパークスがあっさりと1点を先取する。さらにその後、パスボールで2・3塁に走者を進めチャンスを広げると、ここで迎えた5番・奥脇のとき、フルカウントからエンドランを敢行。しかし打球は不運にもファースト正面を突くライナーとなり、飛び出したサードランナーも戻れず、結果は最悪のダブルプレー。惜しい追加点の好機を逃した。
▲鮮やかな速攻でTNCが早くも先取点


▲2回、DELTAが反撃に転じるも無得点
 一方、先制されたDELTAは2回にすぐさま反撃。この回先頭の4番・家倉が初球デッドボールでいきなり出塁。しかし続く5番・吉野(太)は送りバントを試みるがファールが続き、結局は三振に倒れ1死。6番・阿部も三振に倒れ2死となりチャンスは潰えたかと思われたが、7番・浅香のとき1塁ランナーの家倉が見事に2塁へ盗塁を成功させ、2死ながら2塁の一打同点のチャンスを作る。さらに四球をはさみ1・2塁と反撃ムードは高まったが、しかし期待された次打者の8番・藤崎は空振り三振に倒れ、結局この回無得点。DELTAは惜しい同点のチャンスを逃す。

 その後は両チームの投手が踏ん張り、試合はしばらくこう着状態が続く。なかでもTNCスパークスの先発・竹野は、4連続三振をはじめ5イニングで8奪三振を奪う好投。DELTAに3回以降、攻略の糸口さえもつかませず完璧な投球を披露した。唯一の安打は5回に生まれた7番・浅香によるセンター前へのヒットのみだった。一方のDELTAは2回から早くもリリーフエースの割田を投入。毎回のようにランナーを許す投球が続いたが、気迫の投球で4回までTNCスパークス打線を無失点に抑えた。

 試合が再び動いたのは5回裏、TNCスパークスの攻撃。1死から9番・伊藤がセカンドとセンターの間にポトリと落ちるヒットを放つと、伊藤は果敢な走塁で一気にセカンドを陥れ、1死2塁と絶好の追加点の好機を作る。さらに伊藤は続く1番・浅場のとき、初球からいきなり3塁へスチール。これが見事に決まり、さらにチャンスを広げと、1番・浅場が放ったショートゴロで3塁ランナーの伊藤が本塁に突入。ショートからの好返球で本塁クロスプレーとなったが、キャッチャー・浅香のミットからボールがこぼれ落ち、貴重な1点を追加。足で奪ったといえる価値ある追加点を挙げた。
▲TNCは5回、貴重な追加点を叩き出す


▲完璧な試合運びでTNCが春連覇を達成
 リードを2点に広げたTNCスパークスは6回から左腕エースの福田を投入。福田は快速球と鋭い変化球を武器に、2イニングで3つの三振を奪う完璧な投球を披露。追いすがるDELTAの反撃をピシャリと抑え見事に胴上げ投手に輝いた。福田は昨年、仕事の都合で優勝戦のマウンドには上がれず、無念の準優勝に終わった2年前の西武ドームの屈辱を見事に晴ら素晴らしいピッチングだった。

 この優勝戦は結果的には王者・TNCスパークスの強さが際立った試合となった。スキのない守備と、一つでも多く塁を奪う積極的な走塁、チャンスに畳み掛ける打撃など、まさに王者にふさわしい勝ちっぷり。2連覇も達成し、まさしく歴史的な勝利だった。 一方のDELTAは、一戦一戦強くなっていったまさにトーナメントを勝ち上がる典型的なチーム。エース・阿部、主将の割田を中心によくまとまっていた。この試合は今大会たびたびビッグイニングを作った勢いのある打線が沈黙し、TNCスパークスが誇る竹野-福田による豪華投手リレーの前に自分たちのバッティングをさせてもらえなかった。放ったヒットはわずかに1本。11個の三振を喫し、3塁を踏むこともなく完敗といえる内容だった。しかし決勝では敗れはしたものの、今大会を沸かせたその戦いぶりは、称賛に値するものであった。とにかくナインは精一杯に戦った。

 試合後、TNCスパークス・永森監督に2年連続となるアークカップが贈られ、両チームが力の限り戦った東京ドーム決戦の幕が閉じた。

▲試合終了後、互いの健闘をたたえあう


▲1年ぶりにTNCが王座に返り咲いた